長い不妊治療の末に妊娠が分かったにもかかわらず、思っていたほど喜べない、自分でも驚くほど不安が強いと感じる方は少なくありません。「やっと授かったのだから幸せなはず」と思う一方で、戸惑いや恐れが消えず、そんな自分を責めてしまうこともあります。
不妊治療を経た妊娠には、特有の心の揺れがあります。喜びと同時に複雑な感情を抱くのは、決しておかしなことではありません。その背景を知ることで、自分の気持ちを少し客観的に見つめられるようになります。
喜びだけにならない理由
不妊治療中は、期待と落胆を何度も繰り返す日々を過ごします。その経験が積み重なることで、「喜びすぎると失うかもしれない」という無意識のブレーキがかかることがあります。
妊娠が現実になった瞬間も、嬉しさより先に「本当に大丈夫だろうか」「この先も順調に進むのか」という不安が浮かぶのは、これまで自分を守るために身につけてきた心の反応とも言えます。
不安が強くなりやすい背景
不妊治療を経験した方は、妊娠の経過や数値に敏感になりやすい傾向があります。少しの体調変化や検査結果にも強く反応してしまい、安心できる時間が短く感じられることがあります。
また、「ここまで頑張ってきたのだから失敗できない」という思いが、無意識に自分を追い込んでしまうこともあります。責任感の強さが、不安を大きくしてしまう場合も少なくありません。
喜べない自分を責めてしまう気持ち
「治療までして授かったのに喜べないなんて」「贅沢な悩みだ」と自分を責めてしまう方もいます。しかし、感情は努力や経緯によってコントロールできるものではありません。
喜びきれない気持ちは、これまでのつらい経験があったからこそ生まれるものです。その感情自体が、これまで懸命に向き合ってきた証でもあります。
感情の揺れは自然な反応
不妊治療を経た妊娠では、「安心したい気持ち」と「まだ信じきれない気持ち」が同時に存在することが多くあります。この相反する感情が混ざり合うことで、心が落ち着かなくなるのは自然なことです。
どちらか一方の感情だけを持たなければならないわけではありません。喜びと不安が同時にあっても、それは矛盾ではなく、今のあなたの正直な状態です。
気持ちを整理するための向き合い方
複雑な感情を抱えたときは、「どう感じるべきか」を考えるより、「今どう感じているか」に目を向けることが大切です。喜び、不安、怖さ、安堵など、浮かんでくる感情を否定せずに認めてみましょう。
感情を言葉にして書き出したり、信頼できる人に少しずつ話したりすることで、心の中が整理されやすくなります。整理することで、感情に振り回されにくくなります。
周囲との温度差に悩んだとき
周囲が無邪気に喜んでくれる一方で、自分だけが不安を抱えていると、孤独を感じることがあります。「喜ばなければならない空気」が、かえってつらくなることもあります。
そのようなときは、無理に気持ちを合わせる必要はありません。今の自分にとって負担になる話題から距離を取ることも、心を守る大切な行動です。
専門家に頼るという選択
不安や緊張が強く、日常生活がつらいと感じる場合は、早めに専門家に相談することも大切です。産婦人科や助産師は、不妊治療後の妊娠に伴う心の揺れについても理解があります。
相談することで、自分の感情が整理され、「このままでいい」と思えるきっかけになることもあります。一人で抱え込む必要はありません。
今の気持ちも妊娠の一部として受け止める
不妊治療の末の妊娠で抱える複雑な感情は、これまでの経験があったからこそ生まれるものです。喜びきれない自分を否定する必要はありません。
時間とともに気持ちが変化していくことも多くあります。今の感情も妊娠の大切な一部として受け止めながら、自分のペースで向き合っていきましょう。
